王妃の水

あるときはキリリ凛々しく、表情がほころぶと柔和な優しさに満たされる吉瀬美智子さんには、透明感という言葉がよく似合います。

彼女がまとう香水は、サンタ・マリア・ノヴェッラAcqua della reginaこと「王妃の水」だと言われています。




異国の王妃になるカトリーナ・ド・メディチの嫁入り香水

王妃の水の誕生は1533年

フランス王家のアンリ二世に嫁ぐカトリーナのために、修道女たちが想いをこめて調合した香水「王妃の水」は、後世サンタ マリア ノヴェッラ と改名されましたが、レシピは当時そのままです。

香りを作ったのは、フィレンツェが誇る世界最古の薬局「サンタ・マリア・ノヴェッラ」の母体、ドミニコ会の修道女たちです。現在はズバリ薬局の名前そのものの名を掲げた、ド定番かつ冠のような香水です。
そういえば、世界史にメディチ家とか出てきたな・・と記憶が甦りますね。カトリーナの輿入れ当時、日本はまだ室町時代の後期です。吉瀬さんがまとうのは、なんと500年の歴史をもつ名香です。
香りのピラミッド
TOP NOTE:  ネロリ ベルガモット アマルフィレモン 橘
MIDDLE NOTE: ラベンダー プチグレン ローズマリー クローブ
BASE NOTE:  ベンゾイン

4種類のシトラスが立ちあがるトップの香りはじめは、胸いっぱいに吸いこみたくなるほど爽快です。そのうちにフローラルな優しさにつつまれ、フェミニンな雰囲気にかわります。ベースのベンゾインとは安息香のことで、バニラを思わせる甘い香りでささえてくれます。
ベンゾインには、緊張や不安、孤独感を和らげて、心を静かに落ちつかせる働きがあります。ひとり異国の王室へ嫁ぐカトリーナを気づかう、修道女たちの優しさや心遣いが感じられますね。
サンタ・マリア・ノヴェッラは、まだ熟れてないオレンジを絞ったような爽やかさと、女らしいフローラルの香りが同居する香りです。人工で強いニオイを撒きちらさないので、どこまでも上品です。

天然香料を贅沢に調合するサンタ マリア ノヴェッラ

流行を追わずスタイルをまもる老舗

サンタ・マリア・ノヴェッラ薬局の香水は、フィレンツェの丘陵やイタリア国内にある自局の庭園の花ばなで、作られています。天然の香料をベースに、昔ながらのレシピにそって再現するのが流儀です。

はやりの香調やファッショントレンドにしっぽを振らず、あくまでも店の伝統をまもり継承していくスタイル。天然由来の成分をたっぷり使うため、香りの大げさな自己主張がありません。香害を嫌う日本人の感性にマッチする、控えめさと気品が印象的な老舗メーカーです。

王妃の水をまとったカトリーナの結婚生活

カトリーナがフランスへ伝えたのは香水だけではありませんでした。ナイフとフォークを使い食事をする習慣や、マカロンなどの美味しいお菓子も、文化的なフィレンツェから後進のフランスへ持ちこまれました。カトリーナの教養や洗練された生活スタイルに、フランス宮廷はド肝を抜かれたといいます。
カトリーナは10人の子宝に恵まれましたが、夫のアンリ二世は彼女をスルーして、愛人のもとに入りびたりでした。フランス国内も宗教戦争にゆれ、気苦労のおおい生涯だったようです。「王妃の水」に調合されたベンゾインお甘い香りが、彼女の苛だちを、知らず知らずに慰めたかもしれません。

同じ香水をまとう吉瀬さんの私生活は

10歳年上の実業家のダンナ様とふたりの子どもに囲まれて、順風満帆のようです。爽やかなショートカットの吉瀬さんのイメージと、サンタ マリア ノヴェッラ の清々しいシトラスの香りの立ちあがりは、絶妙にマッチしています。

ミドルのフローラルな優美さは、彼女のたおやかな笑顔に重なります。ナチュラルな吉瀬さんに良く似合う香りだと、あらためて思います。それにしても、500年の時をへだてて、カトリーナ・ド・メディチと吉瀬美智子さんが同じ香水をまとっているなんて、本当におもしろいですね。吉瀬さんのほうが、ずっと似合いそうです。